不定期連載「紙ジャケふうてん記」その4

不定期連載「紙ジャケふうてん記」その4


四回目です。
今回は紙ジャケは紙ジャケでも「紙ジャケットLP」を取り上げます。
大抵のレコード・ジャケットは紙製なので当たり前な訳ですが、
今回お送りするのは「真性」の紙ジャケットLP。
ジャケットは潔くペラ紙2枚(それぞれ表1・表4用)だけというものです。

A式(アメリカ式)、E式(ヨーロッパ式)というジャケット仕様に続く、
第三の新人、L-A式(ラテン・アメリカ式)です。
勝手に命名しました。S-A式(南アメリカ式)でも何でもいいです。

南米音楽の好きな方はご存知かと思います。
南米のレコード漁っているとよく見かけますね。
不思議と他の地域では見ないような。どこかにありそうな気もしますけれど。


インティ・イジマニ inti illimani
これはチリ盤。
チリ・フォルクローレ、ヌエバ・カンシオンを代表するグループ「インティ・イジマニ」、
1969年の作品です。

適当な板紙に、表1のカードには水色と金の2色刷り、表4はスミ1色。
それぞれ片面印刷です。
レコード盤はヘナヘナのビニル袋のようなものに放り込まれ、板紙2枚に挟まれているだけ。
紙製の内袋などもなく、非常に簡素な作り。
トンボが入り込んでいるくらい見当のズレた断裁、さすがのラテン気質です。

印刷できて、おおよそ300mm四方に断裁できればジャケットになります。
EPの仕様がそのまま大きくなったようなイメージでもあります。
こうしたジャケット仕様の意図にはコスト的な要因も多分にあるのでしょう。



アルフレド・シタローサ
そしてこちらはウルグアイ盤。
ウルグアイの国民的歌手といわれた「アルフレド・シタローサ」、1968年の作品です。

基本的な作りはほぼ同じ、ペラ紙2枚のジャケットです。
表1はスミ・紺・赤・橙の特色4色刷り、表4はスミ・赤の2色刷り。
線数が低く、昔の新聞のような仕上がりです。

こちらにいたっては板紙でもなく、本当にペラペラの紙に印刷されています。
が、それでは申し訳ないとおもったのか、
表4側に微妙な厚さの地券紙のような紙が添えられています。

そしてこれらがビニルで包まれ、いわゆるジャケットのように袋状に。
四つ折りにしたビニルの口にそれぞれ表1・表4を投げ込み、
小口2辺をまとめて閉じることでジャケット状になっているのです。
表1・4の紙はそれぞれ完全に密封されています。
もしかしたらチリ盤もビニルに包まれていたのかもしれません。
しかしこんな手間をかけるなら、E式のような作りのほうが手っ取り早いような…。


まことに簡素な作りのジャケットですが、
欧米にはない独特の味わいがあり非常に愛着が湧きます。
音楽にはほとんど触れませんでした。気になる人は自分で調べてください。

いかがでしょう、真性の紙ジャケ。
後者はビニル被ってるからさしずめ仮性でしょうか。
あーいや完全に被ってるからこっちが真性か?

(北村)


  1. 2011/08/19(金) 10:27:49|
  2. 紙ジャケふうてん記
  3. | トラックバック:0
  4. |

不定期連載「紙ジャケふうてん記」その3

不定期連載「紙ジャケふうてん記」その3


またまた「紙ジャケふうてん記」。その3です。
今回は小話。ノイでツァイトなニュー・エイジのお話です。


ニュー・エイジ~と聞くと「マットコートな紙」や「おシンセなお慰み音楽」を思い浮かべるかもしれませんが、
ゲルマン・ロック魂に篤い御仁やサイケでトランシーな諸兄はすぐにあの印象的なイントロが脳内に充満するでしょう。

言わずもがな、マニュエル・ゲッチング(アシュ・ラ・テンペル)の『ニュー・エイジ・オブ・アース』です。

new age of earth マニュエル・ゲッチング
   マニュエル・ゲッチング/ニュー・エイジ・オブ・アース
   またまた売り切れ、こっちはどう?


弊社リイシュー・デザインで、これまた結構前の仕事です。
さかのぼってみるとアシュ・ラ・テンペル1st、2nd、
そして6枚目の『インヴェンションズ・フォー・エレクトリック・ギター』、
ソロ『E2-E4』の紙ジャケットCD復刻に携わり(すべてARC盤)、
いよいよ『ニュー・エイジ・オブ・アース』~4作品のリイシュー・デザインでした。

『ニュー・エイジ・オブ・アース』にはいくつかジャケットのパターンがありますが、
ここではイラストタイプのもの。
当初はまだアシュ・ラ・テンペル~マニュエル・ゲッチングと並列で名義されています。
(今では完全にソロ名義の扱いみたい。)
また写真を使ったデザインのタワー・ジャケ・タイプでは名義が「アシュラ」に。

さらにオリジナル表2で使われていたゲッチング&ロジ(当時の彼女)の写真を
ジャケットに使用したものもありました。
個人的にはそれがよりスペース・サイケな感じで好き。
マゾンナ~山崎マゾの別プロジェクト「CHRISTINE 23 ONNA」のジャケットでも
フィーチャーされていましたね。いかしたセンスです。

で、この分かりにくいようで分かりやすい抽象的なイラスト、
おそらくタイトルよろしく「新時代の夜明けだ」と言いたいのかと思うのですが、
他にもこのジャケットには分かりにくいところでそんなメッセージを発していたりします。

パッと見は、イラストと写真、オーソドックスな書体の文字を組んだジャケット・デザインですね。
ところがこの文字が「Nue Zeit」という書体だったり。
Nue! で Zeit だなんてジャーマン好きはハッとしてグッとくるでしょう。
ドイツ語訳せば、そのまま「ニュー・エイジ」。
ノイ!もタンジェリン・ドリームも連想させて頭がグルグルします。

あーこれで紙も「ニューエイジ」だったら完璧なのか?


(北村)


・アーティスト:マニュエル・ゲッチング
・タイトル:ニュー・エイジ・オブ・アース
・発売日:2008年12月5日
・規格番号:ARC-7191
・E式シングル紙ジャケット


  1. 2011/08/02(火) 13:14:01|
  2. 紙ジャケふうてん記
  3. | トラックバック:0
  4. |

不定期連載「紙ジャケふうてん記」その2

不定期連載「紙ジャケふうてん記」その2


久しぶりに「紙ジャケふうてん記」。その2です。
今回はジャケットではなくCD盤面考察。
紙ジャケ話じゃないじゃないか、とのツッコミはなしです。
アンソニー・フィリップス
   アンソニー・フィリップス/SIDE
   売り切れの模様なので、こちらも。


弊社リイシュー・デザイン、結構前の仕事です。
初期ジェネシスの立役者アンソニー・フィリップス、1979年の作品。
アルカンジェロから発売された全24作に及ぶ「アンソニー・フィリップス」紙ジャケットCD復刻シリーズの第三弾です。
オリジナル盤のリイシュー・デザイン、新規ジャケット・デザイン制作と携わりました。

さて、今回はそのジャケットではなくCD盤面に焦点をあてて。
国内CDプレスはシルク印刷二色刷りがスタンダード。
海外では四色刷りのオフセット印刷、国内でいうところのスーパー・ピクチャーCDなどが
標準化されている場合もあるみたいですが、国内ではまずシルクで二色が一般的。

さらに使えるインキの種類もかなり限られ、プレス工場によって多少種類の違いも。
こう書きますと国内プレスが不便そうですが、
作ってみるとシルク印刷のこの制限された感じがいい。

盤面印刷はインキが重なると下地の色の影響を受けますが、基本的に掛け合わせにはなりません。
多色刷りの版画の要領で印刷データを作って行きます。
(当然、地色の影響を想像してインキを重ねる版をつくることも)


文章では説明しにくいのでこちらを。
アンソニー・フィリップス
こっち(左)とそっち(右)をかさねるとこうなる。
こっち(上)が印刷データ、そっち(下)は仕上がりイメージ。


アンソニー・フィリップス
ロゴのあたりをやけに細かく。


作業上は見た目のデザインから作りますが、あくまで二色刷りの仕上がりと分版を想像しながら。
最終的には印刷用に二版に分けて。分版作業はいつもドキドキ。
細かい部分には版ズレ防止にトラップをしかけつつ、何度もシミュレーションして作ります。

見た目だけつくって印刷現場に渡してしまう方もいるみたいですが、それは何だかもったいない。
二色刷り等の面白さは、制限された中で仕上がりを想定しながら色々組んでいく事にもあるように思います。

盤面印刷ではクリア系やラメ系、同色・同系色の重ね合わせなど色々な実験をしました。
まだまだ面白いものができそうです。


(北村)


・アーティスト:アンソニー・フィリップス
・タイトル:SIDE
・発売日:2007年7月20日
・規格番号:ARC-7231
・E式シングル紙ジャケット、内袋つき


  1. 2011/07/26(火) 15:25:08|
  2. 紙ジャケふうてん記
  3. | トラックバック:0
  4. |

不定期連載「紙ジャケふうてん記」その1

不定期連載「紙ジャケふうてん記」その1


振り返ってみると何やら随分と紙ジャケ制作に関わってきたものです。
紙ジャケ・コレクター、マニアは大勢いらっしゃるとおもいますが、
私は紙ジャケ作る方のマニア、他に同士はいないのか。
といってはみたものの細かい仕様などは、日々の制作の中、薄ぼんやりと忘れていってしまいます。
備忘録的ではありますが、不定期連載「紙ジャケふうてん記」として少しずつまとめていこうと思います。



ボビー・ボイド・コングレス

ボビー・ボイド


最近の仕事です。
「THINK! + GROOVE~レアグルーヴの秘宝」第三弾、ボビー・ボイド・コングレス
フレンチ・ファンク幻の作品が40年の月日を越えて復刻です。
音・内容は他でも語られますので、ここではジャケット仕様にのみ焦点を当てて。

1971年発表当時はなんと300枚しかプレスされなかったようですが、
レア感はその枚数だけではありません。
シンプルなジャケットの作りにもなかなかレアっぽさが見受けられます。
実はこれ手にしたときから既にレアグルーヴなのでした。

まずジャケットのタイプとしてはE式(ヨーロッパ式)のシングル・ジャケットに分類されるもの。
しかしこのジャケットには「背」に当たる部分がありません。
厚紙を二つ折りにし、のりしろで接着している簡素な作りです。
憶測ですが、このタイプのジャケットは12inchシングルやプロモーション盤などに多いように思います。

そして表面加工はPP貼り。
表面保護や光沢・質感などを与えるためポリプロピレンのフィルムが圧着されています。
なのですが、これも表1だけに貼られているという変則仕様。
A式(アメリカ式)のように表1と表4が構造的に分離しているもの
(あるいはE式・A式ともに表1-4と表2-3が分離しているもの)の場合は、
表側のみに貼られているということはよくあります。
ボビー・ボイドのジャケットはE式シングルですから、表1-4は地続きです。
展開図上、片方にのみPPを貼るわけですから、
全面貼りに比べてズレないように余分に見当合わせが必要です。
工程に一手間かかるわけですが、当時は使用面積を抑えた分コストも削減できたのかもしれません。

同様のものでパッと思いつくのはマグマの1st。
おなじフランスですが、こちらはプログレ~ジャズ・ロックの文脈です。
ブラックではない独特のファンク色が強いころもありました。

マグマ

これも弊社仕事でした。


こちらはE式ダブル・ジャケットで表1-4と表2-3が一体のもの、展開すると一枚の紙です。
これも表1-4側にのみPPが貼られています。
ダブル・ジャケットですから表面保護という点ではこれでも十分でしょう。
しかしボビー・ボイドは表4ムキ出し、表面保護はあくまで表1のみです。
たまに見かける仕様ではありますが、
手に取る度になぜE式シングルでPP片面だけなんだと考え深くなります。

そして分かりやすいところでは刷色。
ポピュラーな四色刷りではなく、スミと特色オレンジの二色刷りです。

総じてみるとプレス枚数はもちろんのこと、「背ナシ」「PP片面」「二色刷り」と
当時はパッケージのあらゆるところでコストを抑えようとしているようです。
とはいえ今それを再現してみると、いろいろなところで規格外の作りであり、
そのレアな組み合わせがかえって独特の雰囲気を醸し出しています。
シンプルで非常に味わい深いジャケット仕様、そこにもグルーヴを感じていただきたい。
普通感じないか。


以上、憶測がままありますので、
書誌学的にレコード・ジャケットを調べている方がいらっしゃいましたらご教授ください。
では。

(北村)


・アーティスト:ボビー・ボイド・コングレス
・タイトル:ボビー・ボイド・コングレス
・発売日:2011年6月8日
・規格番号:THCD179
・E式シングル紙ジャケット


  1. 2011/06/08(水) 15:46:34|
  2. 紙ジャケふうてん記
  3. | トラックバック:0
  4. |